前編でバルセロナの魅力に触れましたが、今回はアントニ・ガウディの作品群を、その中でも特にカサ・バトリョ、グエル公園そしてバルセロナ郊外にあるコロニア・グエル地下礼拝堂を紹介します。
アントニ・ガウディ(1852-1926)、スペイン・カタルーニャ出身の建築家。彼は自然に学び自然からヒントを得ることによって斬新で魅力あふれる建造物を数多く生み出しています。この自然を取り入れる手法はスリランカ編15で紹介した天才建築家バワと相通じるものがありますね。
1926年6月10日、ガウディはミサに向かう途中路面電車に轢かれて亡くなってしまいます。
バルセロナには「アントニ・ガウディの作品群」として7か所の世界遺産があります。1984年に①カサ・ビセンス、②グエル邸、③グエル公園、④カサ・バトリョ、⑤カサ・ミラ、⑥コロニア・グエル地下礼拝堂が、そして⑦サグラダ・ファミリア教会の生誕のファザードと地下聖堂が2005年に追加登録されています。
この日はあいにくの雨。でも、チカちゃんの大好きなガウディの作品に会えるとあって、雨もなんのその。
先ずは、カフェで朝食を!
バルセロナのメインストリートはグラシア通りとランブラス通りです。こちらはグラシア通り、パリのシャンゼリゼのような雰囲気で高級ブランドショップやカフェなどが立ち並ぶオシャレなエリアです。ガウディのカサ・ミラやカサ・バトリョもこの通り沿いにあります。
グラシア通りの北の端に位置するカサ・ミラ。ガウディによって高級マンションとして建てられました。世界遺産ですが、現在も賃貸の居住者がいるそうです。居住区域を除き見学することが出来ます。
外観は地中海をイメージして波打つような曲線で表現されています。
カサ・ミラへの入口。今回はカサ・バトリョの内部見学を予定していますので、ここはパス。
カサ・ミラからグラシア通りを400m程南へ歩くとカサ・バトリョがあります。
カサ・バトリョ。当時は集合住宅として建てられました。ちなみに、カサとは家のことで、カサ・バトリョとは”パトリョさんの家”という意味ですね。
かわいいベランダやカラフルな壁です。
出窓に取り付けられた柱が骨のような形をしていることから、”骨の家” とも呼ばれているそうです。
中へ入りましょう!
日本語のオーディオガイドで説明を聞きながら、2階へ上がります。
階段は竜の骨をイメージして造られています。
暖炉の間、入口はキノコ型になっています。
出窓のあるサロン。
白い柱が外から見ると骨のようでしたが、内から見ると花の茎のようでもあります。
部屋の仕切りは波を、ステンドグラスは海のブルーをイメージしています。
天井も巻貝の形になっています。
サロンから反対側に行くとテラスがありました。
一面タイル張り。
小雨が降ったり止んだり。
テラスから戻り、
これから上の階へ行きます。
振り返ると、海の中へ吸い込まれそうな感じ!
この椅子もガウディの設計によるもの。
”ムンクの叫び” のよう!
吹き抜け。実際の壁の青色は上に行くほど濃くなっています。下から見上げた時、同じ青色に見えるようにするための工夫です。
上から見ると、おとぎの国のようです。
ついたてになっているガラス越しにのぞくと、
水中にいるように揺らめいて見えます。
最上階、俗にいう屋根裏ですが、白壁の美しい部屋になっています。
壁の形は竜の肋骨をイメージしたものだそうです。
階段を上って屋上に出ると、
屋根は竜の背骨をイメージしたものになっていました。
階段の途中にあるベランダでスタッフが記念写真(合成写真)を撮ってくれました。観光施設によくある有料サービスで、出る時に買うことも出来ます。もちろん無視しても構いません。
買うつもりはありませんでしたが、結局買っちゃいました。こんな感じで合成されていました。
雨のせいかそれ程混んでいなかったので、ゆったり見学することが出来ました。
外に出ると雨が止んでいました。
カサ・バトリョのすぐ近くにカサ・リェオ・イ・モレラがあります。
カサ・リェオ・イ・モレラ。
設計したのはガウディではなく、あの絢爛豪華なカタルーニャ音楽堂を手掛けたモンタネールです。
モデルニスモと言われる建築様式ですが、ベルギー編で紹介したアールヌーボーと同じようなものですね。
内部の見学はパスします。
.マックで、
コーヒータイム
グラシア通りを散歩した後、メトロとバスを乗り継いてグエル公園に行きます。
バスでグエル公園に着くと、結構な雨。近くのレストランに飛び込むと私達で満席、ラッキー!
Tシャツがビショ濡れ。これは洗濯物ではなくれっきとした売り物です。取り込むでもなく、濡れたってヘッチャラみたい。
ランチはパエリア。なかなかのお味でした。
こちらは正面玄関ですが、出口専用。事前に予約をしていた時間になりました。
入口には長い行列が出来ていましたが、流れています。
実業家エウセビ・グエル氏の依頼で、ガウディが手掛けた公園です。当初は分譲住宅地にする計画でしたが、斬新過ぎて売れず、公園だけになったそうです。
中央階段、ドラゴンの階段とも呼ばれています。階段の途中にトカゲの噴水があります。その上に大きな柱が並ぶ未完成の市場があり、市場の上は広場になっています。
グエル公園のシンボル、トカゲ(ドラゴン)の噴水。噴水というよりもヨダレのよう!
ドラゴンの階段を上って行きます。
見下ろすとグリム童話に出て来るお菓子のような家が2棟並んでいます。左が門番の家、右が管理事務所でお土産ショップもあります。
階段を上りきると、大きな柱が26本あるエリアがあります。本来であれば市場になる予定でしたが未完のまま。今日は雨で、みなさん雨宿り。
この地下は広場で集めた雨水を貯めておく貯水槽になっています。
天井にはカラフルなモザイクも。
市場から屋上にある広場に行きましょう。広場は市場の26本の柱で支えられています。
グエル公園でも人気の広場です。
広場はタイルで出来たベンチで囲まれています。
波打つベンチ
砕いたタイル(破砕タイル)が使われています。
お菓子の家やバルセロナの街並みが見えます。
人気の撮影スポットで、チカちゃんもご満悦。
今日は雨でベンチに座ることが叶いません。以前、ツアーで訪れた時に座りましたが、石で出来ているとは思えないほど座り心地が良かったことを覚えています。
なお、ベンチには雨水が溜まらないような工夫がなされています。
広場を下りると ”洗濯女の回廊” に出ます。
不思議な形の支柱ですね。
回廊の上にも通路があり、この支柱で支えてます。
支柱の一つに洗濯女をかたどった柱があります。これが "洗濯女の回廊" の名前の由来になっています。
回廊が螺旋状になっています。
上の段の通路に通じています。
中央階段に戻り、出口に向かいます。
最後はショップのあるお菓子の家を見学。
正面玄関の "鉄の門"、出口です。
バスでホテルへ帰ります。
この日はチカちゃんの誕生日。
ディナーはレストランHISOPで。小さなお店ですが、ミシュラン1つ星です。星付きとはいっても、びっくりするようなお値段ではありません。
赤ワインで乾杯。私の好きなピノノワールです。
予約時に誕生日であることを伝えていたので、テーブルにカードが!
料理はコースです。これはレモンパイ。
マグロとポルチーニのスープ。ポルチーニは松茸とトリュフと並ぶ世界三大キノコですね。
トリュフとチーズを添えた茄子
スタッフが座席の近くで麺のようなものを取り分けています。
Rossejat(ロセチャッ)というお米の代わりにパスタを使ったパエリアでした。
魚料理
鳩肉
チーズの盛り合わせ。チーズはチカちゃんが大好きですが、私には塩分が多目かな。
ケーキかなと思いきや、冷やしたスイカです。
杏子とヘーゼルナッツのデザート。
お店からチカちゃんへ、お誕生日プレゼントのケーキ。
*コロニア・グエル地下礼拝堂へ
チカちゃんの特別リクエストもあり、コロニア・グエルに行くことに。
バルセロナ市街から西に10km余りの所にあります。メトロでエスパーニャ広場まで行き、そこからカタルーニャ鉄道に乗り換えます。
車内の路線図にColonia Guell 駅がありました。小さな駅のよう、乗り過ごさないように注意!
30分弱で到着。
下りたのは私達と前のカップルの2組だけ。
無人駅、周囲には何もありません。
足跡のマークが! これを辿って行けば目的地に行けそうです。
旧紡績工業団地。
19世紀末、労働者は劣悪な環境で働かされていました。そこでグエル氏はこの工場で働く従業員のために住居や商店、学校、病院そして教会などを作り、彼らの生活の向上に取り組みます。それが生活共同体としてのコロニーであり、これから訪れるコロニア・グエルです。
駅から10分程で到着。
先ずは観光案内所へ。ここで地下礼拝堂への入場券を購入します。
礼拝堂に行く前に、街の中を見て回ります。
殆どの建物が赤茶色のレンガで造られています。
街の奥に素敵な建物が、学校です。
美しい街並みですが、殆どが私有地で中に入ることは出来ません。
中央にある広場に出ました。
コロニーの名前にもなっているグエルさんの像。
ランチは広場のレストランで! ウェーターにビールを注文し、メニューをお願いしました。
かなり時間がたってからビールが来ました。のんびりしてますね。が、メニューがありません。ウェーターにメニューは? と尋ねると、こちらに来いと呼んでいます。
看板にメニューと書いてあります。本日のランチで前菜、メイン、デザートの内容がスペイン語で書かれていました。つまり、メニューをお願いした時点で本日のランチの注文が完了していたわけですね。
それにしてもなかなか料理が出て来ません。やっとウェーターが来たかと思うと、赤ワインのボトルをテーブルに置きました。頼んでいないと言うと、食事にはワインがついているとのこと。周りを見渡すと、皆さんワインを楽しんでいます。後で分かったことですが、スペインでは日本のお茶のようにワインが無料でついてくる風習があるそうです。さすがに近年都会では見られなくなりましたが、田舎では今も残っているところがあるようです。
前菜、メイン、デザートとも2種類から選択。私達は2人ですから、別々のものを注文し、シェアすることに。前菜は魚とリゾット。
メインはステーキとソーセージ。
でっかいステーキ。安物の肉のようですが、これがとっても美味しいんです。
デザート。これでワインも付いて1人9ユーロ、当時の為替135円/ユーロだと1200円程です。酔いも手伝って大満足。
ここではゆったり時間が流れています。
ブランコ。これなら小さな子供でも大丈夫ですね。
これからコロニア・グエル地下礼拝堂に向かいます。
小高くもない丘の上にあります。
見えて来ました。でも、教会らしくありません。
入口ですが、スタッフもいません。この時は!
左の扉に ”教会” と日本語で書かれています。扉が開いていましたので入って行くことに。
変わった建物です。1階部分だけで上部にあるはずの塔が見当たりません。ガウディがサグラダ・ファミリアの建設に集中するため、コロニア・グエル教会のプロジェクトから途中で離脱してしまったためです。結局出来たのは半地下にある礼拝堂だけで、未完の教会になってしまいました。
チカちゃん、うれしそう。
複雑な梁の構造をしています。
柱の上部も間近に見えます。天井が低いためですね。
幾何学模様の美しいモザイク。
内部は半地下になっています。半地下にしたことで空間が広がり、外から見た時よりも大きな教会に感じます。
祭壇
天井を支える4本の柱がいびつな形をしています。今にも崩れそう!
柱もその上の石も粗削りのまま。天井のアーチは木で出来ているのかと思いましたが、よく見ると、薄いレンガを積み重ねていました。
天井のアーチも見事です。その天井から十字架を背負ったキリストが宙に舞うように吊り下げられています。
よく見るとキリストの膝が曲がっています。このように大きく曲げているのは珍しいですね。
椰子の木をイメージしたような柱です。
ステンドグラスから光が優しく差し込んでいます。
そこへスタッフの方がやって来て、ステンドグラスを開けてくれました。窓になっていたのですね。
下の2枚が開きました。上下左右4枚すべてが開くと蝶の羽のように見えます。そして残りの固定されたグラスは十字架の形になるというわけです。
礼拝堂にはガウディがデザインした椅子が置かれています。こちらの二人掛けの椅子は少し開き気味。お祈りの際、やや外向きになることで互いに気にならないように配慮がなされています。
???、ごみ入れでしょうか?
チカちゃんが何かしています。お祈りかと思いきや、懺悔のようです。
祭壇の横に階段がありました。
上って行くと、礼拝堂が上から見渡せます。
窓枠は破砕タイルで覆われています。
その上に鐘楼が見えます。
上がって行くと、
だだっ広い屋上。本来であればこの上に尖塔が建つ予定だったのですね。
コロニア・グエル地下礼拝堂、世界遺産です。私達の見学中に日本人の団体ツアーが来ましたが、20分程で帰りました。バルセロナから北西へ40km程のところにモンセラットという奇岩で人気の観光地があり、こことの組み合わせのツアーだと思います。彼らが去ったあとは私達2人だけで世界遺産を独占。
ガウディに興味のある人にはお奨めの場所です。
出口付近にあるコロニア・グエル75周年の像。
最初に立ち寄った観光案内所に戻って来ました。ここには展示場もあります。
礼拝堂に使われているモザイク。
実際にはこのような感じ。
ガウディが考案した逆さ吊り模型のサンプル。
(参考)ガウディがコロニア・グエルに教会を造るために実際に作った逆さ吊り模型がこちら。柱や梁に見立てた紐に重りをぶら下げて建物の重心やバランスを検討するためです。実験はサグラダ・ファミリアの事務所で行われたため、この模型はサグラダ・ファミリアに展示されているものです。(この模型や写真はここにはありません)
コロニア・グエル地下礼拝堂の上層部が完成すればこのような教会になっていたのでしょうね。結局、コロニア・グエル教会は未完に終わり、逆さ吊り構想はサグラダ・ファミリア教会で生かされることになります。
カタルーニャ鉄道でホテルに帰ります。
今夜もチカちゃんはサングリア。
サラダ
メニューに迷ったら、迷わずパエリア。
バルセロナと言えば、サグラダ・ファミリア。その人気は完成が近づくにつれ日に日に高まっています。スペイン編の最後はそのサクラダファミリアを紹介します。