バンコク(タイ)、シェムリアップ(カンボジア)に続いて今回の旅の締めくくりはベトナムの首都ハノイです。2016年12月中旬に4泊5日で訪れます。
ベトナムは南シナ海に面した南北に細長い国で、面積は33万平方km、人口98百万人の社会主義国家です。一人当たりの名目GDP(2019年)は3,416米ドルで日本の約12分の1、タイの半分、カンボジアの倍ほどです。歴史的には、永らく中国の支配を受け、19世紀後半にはフランスの植民地となります。第二次大戦後は南北に分断され、1965年から米国との本格的な戦争、いわゆるベトナム戦争が始まります。その10年後に米国が支配するサイゴン(ホーチミン市)が陥落、南北が統一されてベトナム社会主義共和国が誕生しました。
ハノイでは今もなお中国やフランスの文化の香りが漂い、街の中心部にはかつて商業区だった旧市街が古き時代のベトナムの面影を残しています。週末にはナイトマーケットが開催され街中が市民や観光客でごった返しています。
ホテルは旧市街の中心部にあり、街歩きにはもってこい。もちろん週末のナイトマーケットに合わせて日程を組んでいます。
カンボジアのシェムリアップを出発し、夜の9時半ころハノイの旧市街にあるラ・シエスタホテルに到着。
ウェルカムドリンクのおもてなし。スタッフの気遣いが伝わって来ます。
もうすぐクリスマス。
この日はホテルで夕食。中華ですが、洗練されたお味です。
初日はハノイの市内見学。
ホーチミンの生誕100周年を記念して建てられたホーチミン博物館にやって来ました。ホテルから西へ2kmほどのところにあります。
ホーチミンは、第二次世界大戦中は日本軍と、戦後は南北ベトナム統一のためにフランスと、その後米国とのベトナム戦争を戦って来たベトナムの英雄です。
階段を上って行くと、人民服をまとったホーチミンの像が右手を挙げて出迎えてくれます。ここからホーチミンの生涯にまつわる品々を見学して回ります。
茅葺の家、ホーチミンの生家を再現したもの。
裕福な人々の乗り物や家具。支配階級の人達の生活スタイルです。
こちらには貧しい人々の生活ぶりが展示されています。
植民地時代の悲惨な状況がホーチミンを独立運動へと誘ったのでしょうね。
ホーチミン博物館の東側に一柱寺があります。
一柱寺は俗称で、南向いにある本堂の楼閣として建立されたものです。
蓮池の中に一本の丸い柱を立て、その上に仏堂を載せています。小さなお寺ですが、池に浮かぶ蓮の花のようなお寺としてハノイのシンボルになっています。
階段の手前にお供え物のための台が置かれています。燃え残ったお線香が花火のよう!
10段ほどの階段を上ってお参り。お堂には8本手の黄金の観音様が安置されています。チカちゃん、何をお祈りしたのでしょう?
蓮華(レンゲ:蓮の花)の上で子供を抱いている観音様の夢を見た王様に子が授かり、お礼に一柱寺を建立しました。
ということで、子宝のご利益があるそうです。
一柱寺から北へ200mほどのところにホーチミン廟があります。
廟の周辺は広々としていて、整然と管理されています。いかに大切な場所であるかが伝わってきます。
ホーチミン廟は総大理石造りで、ベトナムの民族的英雄ホー・チ・ミン主席の遺体が安置されています。拝観は午前中のみ、しかも本日金曜日は休館日でした。
ホーチミン廟から南へ1kmほどのところにある文廟(孔子廟)に人力三輪車シクロに乗って向かいます。
街中バイクだらけ。シクロは完全オープンカーですから、まともに排ガスをくらってしまいます。アジア都市部に共通した悩みですね。
文廟(ぶんびょう)への入り口となる文廟門に到着。文廟は儒学の開祖である孔子を祀るための霊廟で、孔子廟とも呼ばれ、1070年に建立されました。
「皇帝の道」と呼ばれる赤煉瓦が敷き詰められた歩道が文廟へと真っ直ぐに伸びています。その道を進むと、第二の門となる大中門があります。
大中門の赤い瓦屋根の上に破砕タイルが埋め込まれた2匹の鯉が踊っています。滝登りをしているところで、滝を登り切った鯉は龍になると言われ、「登龍門」の語源にもなっています。
更に皇帝の道を進むと、第三の門・奎文閣(けいぶんかく)があります。2階の丸い窓が文学を司る ”奎星” を表しており、ハノイのシンボルとしてベトナムのお札にも描かれています。
奎文閣の門をくぐると四角い形の池があります。
池の両側に亀に背負われた石碑が並んでいます。この石碑には官吏登用試験(科挙)に合格した人の名前が刻まれています。
亀の頭をなでると試験に合格出来るというご利益があるそうですが、ユネスコの世界記憶遺産に登録された2010年以降、触れることは出来ません。
池から大成門をくぐると広場があり、その先に文廟の拝堂と大聖殿があります。
チカちゃんの後ろに見えるのが拝堂です。
広場に素敵なドレスを着た美女が! 観光客がカメラを向けています。
拝堂に、亀の背中に乗っている鶴の銅像がありました。こちらの像には触ることが出来ます。鶴の胸を撫でている人を鶴鶴頭の亀が恨めしそうに見上げています。
拝堂から奥へ進むと大聖殿があります。
この大聖殿に孔子が祀られています。
黄金の亀、珍しく何も背負っていません。科挙に合格した出世亀でしょうか。
大成門から奎文閣へ、そして皇帝の道を引き返して大中門をくぐりるとその先に出入口の文廟門があります。
出口付近には龍の形をしたトピアリー(樹木の造形物)もありました。
文廟からシクロでセントジョセフ教会に移動します。
セントジョセフ教会。旧市街にある大聖堂でハノイ教会とも呼ばれ、ハノイのシンボルとして親しまれています。残念ながら昼休みの時間で閉まっていました。
教会のそばにカフェがあります。カフェといっても、皆さん風呂イスのようなものに腰掛けています。チカちゃん、最初は躊躇していましたが、意を決して入ることに。
チカちゃんが周りをキョロキョロ。皆さん、何か食べています。柿の種ならぬ、ひまわりの種です。お代は不要、食べ放題です。
殻は床にポイ。特に美味しいというほどのものではありませんが、食べ始めると止まらなくなります。
旧市街のチャンカム通りにあるマダムヒエンに来ました。フランス人シェフが開いた創作ベトナム料理のお店です。人気店ですが、遅めのランチだったので席がありました。
外は暑いですが、テラス席に限ります。モザイク装飾の素敵なテーブルですね。
ランチメニューをオーダー。
お椀にライスをよそってくれます。テーブルには具材が並んでいます。
これら具材をライスの上に載せれば出来上がり。
デザートも付いています。雰囲気といい、味付けといい、これがベトナム! と思ってしまいます。
食後は街の中心にある湖を散歩しながらホテルへ帰ります。
ホアンキエム湖。周囲1.8kmほどの小さな湖ですが、湖畔は緑豊かで市民の憩いの場になっています。
湖の中に島があります。この島のお寺に体長2mほどの大亀の剥製が展示されているそうです。
島へは朱色の橋を渡って行くことが出来ます。
夜のホアンキエム湖。先ほどの橋がライトアップされています。
湖の近くに、観光客に人気のタンロン水上人形劇場があります。
何故かピカチューがうろちょろ。ここは素通りしてレストランへ。
グリーンタンジェリンで夕食。タンロン人形劇場の近くにある、フランス料理とベトナム料理が融合された人気のレストランです。
店内も洒落た造りになっています。
フレンチコースとベトナミーズコースがありますが、ベトナム料理をチョイス。
メインディッシュとデザート。フレンチ風の雰囲気で美味しく頂きました。
食後は旧市街の通りに沿ってライトアップされたナイトマーケットをぶらつきます。屋台やテラス席で家族や友人と、食事やお酒を楽しんでいます。
ホテル前も華やか。
明日はハロン湾クルーズで、早朝にホテルを出発します。
現地ツアーに参加し、ハロン湾までバスで行きます。港まで約160kmで4時間ほど。現在は高速が開通し便利になっているようです。
ハロン湾には大小3000もの島々や奇岩があります。水面に浮かんで見える島々の景観は水墨画のように幻想的で、「海の桂林」とも呼ばれています。1994年に世界自然遺産に登録されました。
途中、ドライブインのような土産物店で休憩。ここには工房もあり、多くの女性が工芸品の刺繍絵を作っていました。絵画と見間違えるほど精緻に出来ています。
ハロン湾クルーズの拠点となる港に到着。人気の観光地だけに多くの人で溢れています。
船乗り場に移動中、港内に水上人形劇場がありました。こちらは劇場そのものが水上にあります。
クルーズ船に搭乗。乗船後、ハロン湾名物のシーフードランチとなります。
テーブル席でのビュフェスタイル。種類も量も豊富、味も申し分ありません。
メインは大きな鯛の姿蒸し。誰が最初に手を出すのか躊躇していると、同じツアーの女性が取り分けてくれました。
食事が終わる頃には見学地点に到着。
島々や岩々が海面から突き出ています。
我々が訪れたのは DAU GO という島です。クルーズ船の出発港から3~4kmほどのところ、意外と近いですね。
ここでクルーズ船を降りて、DAU GO島の湾内や鍾乳洞を見学します。
島々に囲まれた湾の中に建物が浮かんでいます。水上に浮かぶ船着き場です。
船着き場に着くと、小舟が集まって来ました。
ここで手漕ぎボートに乗り換えます。乗るのは船頭さんと私達5名。
ハロン湾の洞窟探検に出発!
白い岩肌の下に洞窟が見えます。
この洞窟の中に入って行きます。多くの小舟が列をなしています。
石灰岩の台地が長い時間をかけ、浸食されて出来た洞窟です。
洞窟を抜けると、次の洞窟へと向かいます。
小舟の渋滞で、順番待ち。
石灰岩はサンゴや貝殻など、生物の死骸が海底に堆積して出来たものです。
それが隆起し、さらに浸食を繰り返してこのような景観が生まれました。
くぐり抜けると、別の洞窟を目指します。
カモが列をなして移動しているようです。
洞窟を抜けたところでツアー仲間と記念撮影。
ところで、チカちゃんの後ろの女性から「もう一度行きたい国は?」と尋ねられ、「スリランカ」と答えると、驚きながら「私も。この前行ってきたところ、最高!」と返してきたのです。
これが私を42年ぶりのスリランカへと誘い、備忘録としてこのブログを始めるきっかけとなるのです。
白い岩肌のトンネルをくぐります。
ハロンとは、ハが降りる、ロンが龍、つまり龍が降りるという意味です。その昔、中国が侵略して来た時、龍が舞い降り、口から真珠を吹き出して中国軍を撃退しました。その真珠がハロン湾の島々に姿を変えた、という言い伝えです。
船着き場に戻って来ました。
船着き場の近くには、海の守り神でしょうか、祠(ほこら)のようなものもありました。
ここでクルーズ船に乗り換え、次の目的地に向かいます。
湾の中にポツンと小さな島が浮かんでいます。
香炉のような形をしているところから香炉島と呼ばれ、ベトナム紙幣の図柄にもなっている有名な島です。
DAU GO島の北側にあるティエンクン鍾乳洞に移動します。
船を降りて、遊歩道を道なりに進みます。
鍾乳洞の見学コース。一本道です。
天空という名の美しい鍾乳洞ですが、その中でも「妖精の乳房」と称される鍾乳石が大人気。
洞窟に入って行きます。
洞窟内はライトアップされていて、とてもカラフル。
上の穴から光が差し込んでいます。
この穴に出入りしている猿を見て、この鍾乳洞が発見されたそうです。
形や色も様々です。まるで彫刻のよう!
これらの鍾乳石は70万年前から1万年前にかけて形成されたものです。
「妖精の乳房」です。上から見ると乳白色。
実は多くの人がこの乳房、ではなく鍾乳石に触っていました。いいのかな?
鍾乳洞から出ると、湾内にクルーズ船が待機しているのが見えます。
遊歩道を下りて行きます。
途中にあった看板の写真から。
エメラルドグリーンの海に浮かぶ島々、これが ”海の桂林” とも呼ばれる所以ですね。
鍾乳洞は3000平方mほどでそれほど大きくはありませんが、鍾乳石の形や色が多彩で美しく見応え十分でした。
クルーズ船に乗ってDAU GO島を後にします。
そろそろ日の入り。ハノイまで4時間ほど、残念ですがサンセットを楽しむ余裕はありません。
港に到着。ここからバスでハノイに帰ります。
バスの中からのサンセット。
9時過ぎにハノイに到着。夕食は旧市街にあるBLACK JACK’Sで。
ステーキやバーガー、ピザなどがあり、アメリカン風のレストランです。
メキシカンもありました。タコスをオーダー、ビールに合いますね。
食後は、ナイトマーケットをぶらつきながらホテルへ。サタデーナイトだけあって、どの通りも賑わっています。
家族で楽しんでいます。
若さでみなぎっている、そんなパワーを感じます。
今回の旅の最終日。ホテル周辺の旧市街を散策しながら、庶民の生活を垣間見たいと思います。
自転車の荷台に籠を乗せ、花や果物を売り歩いています。
旧市街の北にあるドンスアン市場に向かいます。
ドンスアン市場、ハノイ最大級の屋内型の市場です。
所狭しと店が並び、路地には屋台が連なっています。
ドンスアン市場から南のホアンキエム湖まで数多くの土産物店があります。
途中のレストランで昼食を取ることに。
MADAM TRAN レストラン。ベトナム料理で人気のお店です。
「東南アジアではベトナム料理が一番」と知人が言っていました。パクチー嫌いの私はあり得ないと思っていましたが、来てみると、知人の言っていた通りだと実感させられました。
レストランの近くに、DORA NINJA というどら焼きのお店がありました。日本語とベトナム語と英語の説明書きが張られています。
格式のありそうな建物、キムガン亭です。ハノイ旧市街は “ハノイ36通り” とも呼ばれ、36種の職人さんからなる街という意味があります。この街の守護神を祀っているのがこのキムガン亭です。
中に入ると、立派な祭壇があります。
私達のホテルの斜め前に、”マーマイの家” という人気の観光施設があります。
19世紀後半に建てられた商人の家で、入り口は狭く奥に長いベトナムの伝統的な木造家屋です。1階の奥に居間や台所があります。
2階の寝室には豪華な木彫りのダブルベッドが置かれています。
ベトナム最後の夜はホテルのレストランで。
コースメニューでベトナムとフレンチを合わせたハイブリッドのような料理です。
どれも洗練されたお味です。フランス統治下におけるフランス人の食へのこだわりを感じます。
食後酒にウェイターが火をかざしています。
炎が! 一瞬の出来事でした。
食後の散歩。
日曜の夜でナイトマーケットも盛況です。
名残は尽きませんが、明日帰国します。
ビュフェスタイルの朝食。
12日間の日程でタイからカンボジアそしてベトナムを巡り、これから日本へ帰ります。
羽田まで4時間30分のフライトです。
一柱寺にお祈りしたおかげでしょうか、この旅の翌年、孫が誕生。暫らく旅を見合わせていましたが、リタイヤ後の旅第7弾として身近な国である台湾を訪れます。