リタイヤ後の旅第7弾は、2018年4月、東京から3時間半ほどで行ける台湾に7泊8日の日程で訪れます。前半は台北市を中心とした北部、後半は台湾最南端のリゾート地・墾丁に滞在します。
前回のタイ・カンボジア・ベトナムを訪れてから暫く孫の面倒をみていたため、1年半ぶりの海外になります。
台湾の面積は3万6千平方km(日本の約10分の1)、人口は2360万人(日本の約5分の1)で、近代的な都市と下町の雰囲気を併せ持つ親日的な国です。
台湾北部では首都台北市に滞在し、市内観光や周辺の人気観光地を訪れたり台湾グルメを楽しんだりします。
羽田を午後1時20分に飛び立ち、3時45分に台北松山空港に到着。時差は日本が1時間進んでいますので、実際のフライトは3時間25分です。欧米に比べると近くて楽チン。
ホテルに向かう途中、歴史を感じさせる立派な建物、中華民国総統府がありました。台湾の元首である総統が執務する官邸で、日清戦争後の日本統治時代に建設されたものです。
ミッドタウン・リチャードソンホテル(徳立荘酒店)、ここに3泊します。若者で賑わう西門町の交差点に位置し、地下鉄MRTの西門駅にも隣接する立地最高のホテルです。
初日の夜は「欣葉Shin Yeh」という老舗のレストランで夕食。
MRTの中山國小駅を降りてレストランに向かう途中に夜市(雙城街夜市)がありました。路上に屋台が並び、多くの人が食事を楽しんでいます。
夜市の先にお目当てのレストラン欣葉があります。台湾に駐在していた友人のお勧めで、予約はしていませんでしたが、30分ほどで席に案内されました。
スタッフのお勧めに従って注文。
豚の角煮とカラスミの春巻き。
切り干し大根が入ったオムレツと生姜風味のハマグリスープ。
こってりした中華料理をイメージしていましたが、食材や味付けなど家庭っぽいお料理で、美味しく頂きました。
夜市の中ほどに「日本の名優 志村健先生」も絶賛したというマッサージ店の看板を見つけました。早速チカちゃんが足裏の施術を受けることに。
台北2日目は国立故宮博物院からスタート。ホテルからMRTを乗り継ぎ士林駅で下車、そこからタクシーでやって来ました。
ここには中国王朝の歴代皇帝によって集められた美術品が展示されています。フランスのルーブル美術館などと並んで世界四大博物館の1つとされています。
ところで中国の美術品が何故この台湾に?
戦後、中国共産党との内戦に敗れた蒋介石は国民政府を率いて台湾に撤退することになります。その際に多くの美術品が中国本土から台湾に移された、というわけです。
故宮博物院の三宝と言われているのが、「翠玉白菜」、「肉形石」そして「毛公鼎」です。これら三宝に「彫象牙透花雲龍紋套球 」と「雕橄欖核舟」の2点を加えると故宮の誇る五大宝物となります。
こちらが故宮三宝の一つ「翠玉白菜」です。天然の翡翠と玉の色合いを利用して白菜の形に彫り上げています。
白菜の上に多産と子孫繁栄の象徴であるキリギリスとイナゴがとまっています。
翠玉白菜と並んで人気の「肉形石」。昨夜食べた豚の角煮にそっくり。
3層になっている石を、職人さんが加工し磨きあげて美味しそうな肉の質感を出しています。これぞ職人の技ですね。
「毛公鼎」は2800年以上も前の青銅器です。鼎(テイ/かなえ)とは古代中国で作られた三本の足と二つの耳をもつ釜のことです。
鼎の胴内には32行、500文字の銘文が鋳刻されています。青銅器の銘文としては世界で最も長いものだそうです。
こちらは「彫象牙透花人物套球」、故宮の五大宝物「彫象牙透花雲龍紋套球 」と交互に展示されています。どちらも一本の象牙を使って繊細な彫刻が施されています。
直径12cmほどの球体の中に球体が、またその中にも球体があり、全部で21個の球体から出来ています。しかも各々独立して回転するそうです。どのようにして彫ったのでしょう?
先ず球体を作り、次に球体の中心に向かって円錐の穴を何個か開けます。その穴からL字型の彫刻刀で削って中心部の球体を作り、更に外側の球体へと進んで行きます。なんと気の遠くなるような作業でしょう。しかも各々の球体の表面には繊細な彫刻がなされています。親子3代に渡り100年以上もかけて作られたそうです。
故宮五大宝物のうち「雕橄欖核舟」は貸し出し中のため、展示されていませんでした。写真は故宮博物院のものです。オリーブの種に船をかたどったもので、極小の船内には船頭や客など8人も乗っています。
故宮博物院には約70万点のお宝が所蔵されています。そのうち展示されているのは7千点ほどで、定期的に入れ替えを行っているそうです。
故宮博物院からMRTで市内に戻ってランチをとり、その後、車をチャーターして人気の観光地九份と十份を巡ります。
ホテルから徒歩圏内にある點水樓 (てんすいろう)、日本にも支店のある人気のレストランです。
この店のお勧めはカラフルな小籠包。メニューにも七色の小籠包が紹介されています。
一番上の白が一般的な小籠包、時計回りにヘチマとエビ、蟹みそ、トリュフ、バジル、人参、そして中央がからし入りの小籠包です。
スタッフお勧めの葱の包み揚げと大根餅。デザートは杏仁豆腐、濃厚でなめらか。
ガイド付きの車をチャーターして15時にホテルを出発、50分ほどで十份という山あいの小さな町にやって来ました。
商店街の中央を線路が走っています。その線路上で多くの人が何かしています。
願い事を書いたランタン(天燈)を天空に揚げる、ランタン飛ばしです。ランタンは土産物屋さんで購入することが出来ます。筆と墨も貸してくれます。ランタンには色があり、色ごとに運勢があるそうです。例えば赤は健康運、黄色は金運、橙色は愛情運などです。好みの色を選びましょう。
ランタンの4面に願い事や名前などを書いていきます。
完成! これからランタン飛ばし、ガイドさんが写真とビデオを撮ってくれます。
ランタンの上を持ちます。お店のお姉さんが火を点けてくれると、ランタンが膨らんで来ました。
暖まってくれば、ランタンの下を持ちます。そして手を放し、発射。
ゆっくりと上昇して行きます。
ランタンは竹細工の上に紙袋を乗せたもので、油を浸み込ませた紙を燃やして内部の空気を温めます。
速度を増しながら、ランタンが天空へと二人の想いを運んで行きます。
感動もの、 台湾で一番の思い出です。
その後のランタンの運命は? ガイドさんによると、地上に降りたランタンを地元の人が回収し、骨組みの部分を再利用するそうです。
街のすぐ近くに静安吊橋という長さ128mの吊橋があります。かつては石炭を運ぶための橋でしたが、今は観光用になっています。
静安という名前とは裏腹に、結構揺れます。わざと揺らす人もいます。チカちゃん、数メートルのところでUターン。
列車が駅に到着。平渓線というローカル線で、1時間に1本程度走っています。
商店街ではまだランタンを飛ばしていますが、大きなアナウンスが流れると、線路上から急いで退却し始めました。
人が引き上げるのを見計らったかのように列車がやって来ました。
そして何事もなかったように通り過ぎて行きました。
列車が通り過ぎると同時に、ランタン飛ばしの再開。タイで見たメークロン市場の台湾版ですね。
思い出に残る天燈ランタンでした。次は日本人にも大人気の観光地・九份です。十份から車で50分ほどのところにあります。
九份は台湾北部にある山あいの町です。2001年公開のアニメ「千と千尋の神隠し」に出てくる館を彷彿させるとして話題になりました。
九份を訪れるなら夕暮れ前がベスト。そのため、ホテルを午後3時に出発して十份で1時間ほど過ごした後、5時40分頃に着きました。
ガイドさんと別れて、我々だけで観光スタート。九份の観光は「基山街」と「豎崎路」という2つのメインストリートが中心となります。セブンイレブンの横に「基山街」への入り口があります。
通りには土産物店やB級グルメなどのお店が建ち並んでいます。食べ歩きも出来ます。
小腹が空いていたので、さっそく食べ歩き。
いろいろと美味しそうなグルメが目に付きましたが、レストランを予約していますので、ほどほどに。
九份のグルメといえば「阿柑姨芋圓」と言われるほど有名なスイーツ店があります。
店内は混み合っていましたが、なんとか席を確保。一番人気のタロイモ団子のお汁粉を注文、あったかくて美味しい!
「基山街」の突き当りに「豎崎路」、別名「燈籠路」があります。「燈籠路」は下り階段になっていて、通りに沿って提灯が吊り下げられています。
「基山街」から「燈籠路」に入り、階段を少し下りると、
阿妹茶楼の館が見えて来ます。これが「千と千尋の神隠し」のモデルではないかと噂されている館です。階段途中に撮影スポットがありますが、人気なだけに大混雑。
昔懐かしいような雰囲気が伝わってきます。それもそのはず、九份の街並みは20世紀前半の日本統治時代に造られたものです。
阿妹茶楼 、日本語で ”あめおちゃ”と書かれた人気のレストランです。来る途中、ガイドさんにディナーの予約をお願いしましたが、既に満席でした。
そこで予約してくれたのがこちらの「戯夢人生」。
この店名は日本統治時代の台湾を描いた映画、侯孝賢監督の「戯夢人生」に由来するものです。
窓際の海が見渡せる席が空いていました。このフロアには日本の昭和初期の映画をはじめ東洋映画のポスターが壁一面に張られていて、燈籠路の提灯と合わせてノスタルジックな気分にさせてくれます。
ここの小籠包も台北の有名店に劣らない美味しさです。
「戯夢人生」を出て階段を下りて行くと、「悲情城市」と書かれた記念碑がありました。
「悲情城市」、台湾で大ヒットした映画です。そのロケ地がこの九份で、監督は「戯夢人生」と同じ侯孝賢です。
戦後、日本軍から統治を引き継いだ中国国民党による台湾人への大虐殺の引き金となった ”2・28事件” を背景に、台湾の激動の時代を描いたのが「悲情城市」です。
燈籠路を下り切ったところに小さな広場があります。ガイドさんと待ち合わせの時間まで少し間があったので、ビールで最後の余韻を楽しむことに。
時代の波に翻弄され続けて来た台湾、戦後育ちの私達に理解することは難しいかもしれません。ただ、少し歴史を振り返れば、この九份がノスタルジックな風景を通して我々に何かを伝えようとしているのかのようでした。
台北3日目は超高層ビル・台北101と台湾北部の街・淡水を訪れます。
台北101の展望台へのチケットを購入し、
5階からエレベータに乗って89階の展望台まで上ります。このエレベータは東芝製で、2004年から2015年まで世界最速エレベータとしてギネスに認定されています。
エレベータの計時器に45秒の表示。下りる時に要した時間のようです。上がり始めると高さや速度が表示され、37秒で382mの89階に到達。最高速度は61km/h。減圧器が付いているので耳詰まりがすることもなく、乗り心地も快適そのもの。
台北101の高さは508m、2004年の完成時には世界一の高さをほこっていましたが、現在では10番目です。参考までに1位はアラブ首長国連邦のブルジュ・ハリファで828m、建設中のものではサウジアラビアのジッダタワーが1008mになります。
382mの屋内展望台からは台北の高層ビルもはるか下にあります。
超高層ビルといえば、ニューヨークの摩天楼「エンパイア・ステートビル」が浮かんできます。高さ381m、世界で43番目ですが、建築は1931年です。90年も前、戦前のことです。
ところで日本一高いビルは大阪の「あべのハルカス」、60階建てで高さは300mです。エンパイアステートビルにも及びません。世界的にみても300位にも入っていません。ガンバレ、ニッポン!
展望台のフロアが透明で、下の方まで見通せます。高い所が苦手なチカちゃんは恐る恐る。よく見ると、下のフロアに、その下にも次々と我々の姿が映っています。不思議なフロアです。
展望台に併設されているギフトショップ。その左右に赤と緑のポストがあります。高い所へ来れば絵葉書を出したくなるのは、チカちゃんだけでしょうか。
屋内展望台は89階ですが、その上の91階はスカイデッキ、下の88階にはダンパー(制振装置)が置かれた空間があります。
91階は390mの高さで、私達が行くことの出来る最高地点です。しかも天候がいい日だけ解放されています。
スカイデッキ、心地よい風を受けて爽快!
見上げると、タワーの最上部が迫って来ます。
88階に設置されているダンパー。直径5.5メートル、重さ660トンもあります。このシステムによって地震や台風でビルが倒れないようにコントロールされています。
ダンパー室は92階まで吹き抜けで、上からワイヤーで巨大なダンパーを吊るしています。
台北101のキャラクター「ダンパーベイビー」君。顔が101、胴体がダンパーになっていて、売店でオリジナルグッズが販売されています。
ダンパーについての説明がされています。起源は日本だとか。「日本では古くから家の基盤に石を使用。地震時に生じる上部構造と地盤との相対変位を利用し、地震エネルギーを減少」とあります。相対変位?、なんのこっちゃ。それにしても、昔の人は偉い!
感心したところで、サンゴや宝石売り場を通り抜けて、下りのエレベータ乗り場へ。
台北101の前には大きなオブジェがあります。胎児のようなものはエレベータの使用済みワイヤーで作られた「無限の生命」です。
こちらは巨大なLOVEのオブジェ。アメリカのロバート・インディアナの作で世界中に同じようなものがあるそうです。新宿アイランドにも。ⅤとEの間をすり抜けると恋が成就するとか。
101ビルにはショッピングセンターやフードコートが入っています。 小籠包で有名な鼎泰豊の支店もありましたが、本店へ行くことにします。
鼎泰豊(信義店)。”台湾に行くなら鼎泰豊” と言われるだけあって、人だかりが出来ています。待ち時間は40分ほどとのことでしたが、1時間余りかかりました。
皆さんが真剣に見ているのはメニュー。オーダーシートをもらって、注文内容を事前に決めておきます。
小籠包が蒸篭に入って出て来ました。ハーフサイズで普通の小籠包とヘチマ・エビ入りの2種類。ショウガ入りのタレで頂きます。
天使の羽根付き餃子。こちらのタレにもショウガが入っています。台湾ではこのきざみショウガが定番のようです。
デザートはくるみとあずきの入った蒸しケーキ、それと黒ゴマ入りだんごの甘酒スープ。
どれも日本人好みの味で、暑い中を待った甲斐がありました。
鼎泰豊のある東門駅からMRT淡水信義線(赤ライン)で終着駅の淡水にやって来ました。45分ほどです。
淡水は台湾のベニスとも呼ばれる水の都で、台湾の北部を流れる淡水河の河口付近にあります。
駅を出て淡水老街廣場の左手に昔懐かしい街並みの淡水老街があります。
航海の女神を祀っている媽祖廟です。ここまでは台湾らしい雰囲気の街並みでしたが、ここから左に少し行くと、
淡水河の河岸に出ます。河沿いに広々とした遊歩道があり、ヨーロッパらしい香りがして来ました。
チカちゃんが旅行雑誌に載っている有名な酸梅湯のお店を見つけました。酸梅湯は梅ジュースのようなもので、淡水のものが台湾で一番美味しいそうです。私は明日からの台南リゾート地に備え、帽子とサンダルを調達。
川沿いのカフェで一休み。カフェでは臭屁豆腐(しゅうどうふ)も売っていました。名前の通りものすごい異臭を周囲に放っています。この臭屁豆腐を美女が一人で食べているではありませんか。ならば私達も、ということで挑戦することに。
鼻をつまんで口に放り込めば大丈夫! と思いきや、なんとなんと、口の中で強烈な匂いを感じます。ビールで流し込みましたが、臭屁豆腐、ただものではありませんね。
淡水は美しい夕陽が拝めるとあってカップルにも大人気。
あと1時間ほどでサンセットが始まりそうですが、西の空は曇りがち。暗くなる前に引き上げることにします。
台北市内から1時間足らずの淡水、水辺でのんびりするのもいいですね。
淡水でのんびりした後は、市内に帰る途中にある夜市で夕食。台北で一番大きな士林夜市です。
屋台で買って食べ歩きも出来ますが、夜市の中ほどに建物(士林市場)があり、その地下に飲食店街があります。
士林市場の1階では洋服やアクセサリー、おもちゃ、雑貨などを扱っているお店や、占いやゲームなどを楽しめるところもあります。
地下の飲食店街は人で溢れ返っていて、座る席などありません。躊躇していると、店員さんが客を押しのけて2人分の席を作ってくれました。メニューはテーブルクロスです。ビールも置いています。
イカゲソのから揚げと牡蠣オムレツ。牡蠣オムレツには甘いようなしょっぱいようなタレがかかっていて、この店のお勧めです。
小籠包。これまで高級店や有名店で食べて来ましたが、店の雰囲気や接客サービスは別にして、味としてはここが一番かな。庶民の味ですものね。
台北滞在4日目。ホテルはロケーションも抜群で快適そのもの。ただ、中国からの団体客が多く、朝食時にかち合うと大混雑。少しずらすとのんびり出来ます。
本日は午後から台湾南端のリゾート地「墾丁」に移動します。それまでホテル周辺の西門を散策。
ホテルの目の前にMRT西門駅、そして交差点があります。日本でいえば渋谷のスクランブル交差点のようなところでしょうか!
10時過ぎの気温は27度。今日は暑くなりそう。というのも、昨日まで寒い日が続いていました。4月も後半だというのに、しかも台湾で、想定外でした。
西門街のシンボル「西門紅楼」。赤レンガの美しい建物で、日本の統治時代に建てられたものです。
歩道に沿って白っぽいバイクが並んでいます。レンタルバイクかと思いきや、警察のパトロール用です。小回りが効いて、混雑する場所に最適ですね。
杏仁豆腐の専門店「于記杏仁」。店名の通り、杏仁(アーモンド)を使ったスイーツばかり。日本人にも人気のお店で、探し求めてやって来ました。
定番の杏仁豆腐、トッピング無しで頂きます。カップに入った杏仁豆腐を黒いお椀に移し、
パック入りの杏仁ミルクを杏仁豆腐にかければ完了。これが本場の味! これまで私が食べていたのはみつ豆のようなものでした。
台湾のコンビニで買ったキティちゃんのキーホルダー? ICカード乗車券です。
これから新幹線に乗るため台北駅に向かいます。
後編は台湾南部のリゾート地からです。